知る人ぞ知るメーカーから
真のグローバルカンパニーへ。

NOKがCIを刷新した意味

知る人ぞ知るメーカーから真のグローバルカンパニーへ。NOKがCIを刷新した意味。鶴 正雄 NOK CEO、佐藤 可士和 クリエイティブディレクター

佐藤可士和氏の新CIはただのロゴ刷新ではない。
NOKが目指す「変化に強い企業」のかたち

佐藤可士和(さとう・かしわ)氏/クリエイティブディレクター。ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、空間デザイン、デザインコンサルティングまで手掛ける、日本を代表するクリエイター。京都大学経営管理大学院特命教授、多摩美術大学客員教授としてクリエイティブ人材の育成にも尽力している。ICONIC AWARDS 2023 BEST OF BESTなど受賞多数。

CI統一は「グループ企業のシナジーを統合するため」

日本の製造業のプレゼンスを高める手伝いを

「オイルシールなどNOKが作る製品は、一般的な生活では目にすることのないものです。ただ勉強するほどに、重要な部品の数々を、非常に高い技術レベルで作り、大きな売上高を出す理由も分かってきました。

日本のGDPが第4位に下がり、世界的に国力を感じにくくなっている現状は、日本人の一人として寂しく思っていました。NOKという会社には、日本の製造業とその強みが凝縮されている。当初の僕のようにNOKを知らない人も含めて、グローバルにコミュニケーションし、日本の製造業のプレゼンスを高めていくお手伝いができればと」(佐藤氏)

Essential Core Manufacturing

——社会に不可欠な中心領域を担うモノづくり

(——The manufacture of pivotal products that shape society.)

画面を拡大してご覧下さい。

「これからの企業は、社会とコミュニケーションすることが必須になり、また義務ともなります。『社会に不可欠な中心領域』というコンセプトは、NOKの価値を正しく伝えられると思います。

NOKの工場では製品をオングストローム(=0.1ナノメートル)という単位の緻密さで作ります。僕も新CIに関してはイメージとしてオングストローム単位の設計を意識し、一点の曇りもないような仕事をしようと心がけました」(佐藤氏)

今回のCI刷新に込められた思い

「口に出して言えないような細かくて膨大なイメージを、ビジュアルとして集約する。それがグラフィックデザインの力を用いる意味です」(佐藤氏)

鶴正雄(つる・まさお)氏/NOK 代表取締役 社長執行役員 CEO。NOK入社後、MBA取得を経て、提携パートナーのFreudenberg & Co.(フロイデンベルグ/ドイツ) でファイナンスコントロールに携わる。帰国後、NOK経営企画室でFreudenberg & Co.との事業連携強化を推進。2018年よりグループ会社であるNOKクリューバー株式会社にて代表取締役社長に就任、積極的な技術交流を行う。NOKに帰任後、事業推進本部のマネジメントを経て、2021年4月より現職。

「NOKには、日本メクトロンやユニマテックといったグループ企業がありますが、それぞれをMEKやUMTといった3レターコード(3文字)で表す慣例でした」(鶴氏)

「正雄さんが大事に考えていた、グループとしてのアイデンティティの在り方に、僕としてはなかなかソリューションが出せていない状態だったんです。実は、最初にプレゼンテーションしたのは現在とはちょっと違うアイデアでした。それをベースに議論を続け、アイデアを修正しながら、新CIをようやく生み出せた。仮縫いだったスーツが、最後の最後にパリッと仕立て上がったような気持ち。これしかないと思いました」(佐藤氏)

左:NOKグループ 新グループロゴ 右:NOK 新企業ロゴ

「2000年以降のブランディング、特に欧米では、個別ブランドをマスターブランドへ集約していくことが多かった。グローバル化するほど、メッセージを一つにしたほうがコミュニケーション効率が抜群に上がるからです。

NOKも同様にマスターブランドの方法論を用いなければ、強いアイデンティティを持たせられないのでは、と当初は考えていたくらいです。しかし、今回はその枷を壊せました。3レターコードのデザインシステムによって、グループアイデンティティをもたらす、という新しいやり方が見出せました」(佐藤氏)

自分たちの捉え方が変わる。
BtoB企業にも意義あるブランディング

「社会からの認識や見え方が変われば、新しいビジネスが生まれるきっかけにもなるはずです。物事の捉え方一つですが、それは人の考え方や行動も変えてしまう。毎日積み重ねることで、これまでと全く違うところにたどり着ける。

CIも記号です。本来、形としての記号自体に意味はあまりない。活動を重ねていく中で、その記号に意味を集約していくからこそ、シンボルとなるのです。今回のCIも、今日からNOKのみなさんがつくっていくものです。このCIを見て、グループ活動をイメージすることが大切だと思います」(佐藤氏)

「可士和さんの良さは、過剰も過少も無いシンプルさにある。突き詰めて考えなければたどり着けない境地です。この考え方は経営にも通じる。日々、世の中の情勢が変わり、さまざまな情報が入ってきますが、それらに踊らされて拙速な判断をしてしまってはならない。

我々が対峙すべきはお客様であり、品質であり、安全です。その向き合うべき本質は変わらないことを、“佐藤可士和のプレイスタイル”から感じました。センスはもちろん、企業が果たすべきコミュニケーションのプロセスを体感できたのは、リーダーとして非常に得るものが多かった」(鶴氏)

日本発BtoBメーカーが、世界と戦うために必要なこと

「あえて強い言葉を使うと、『伝わっていない、知られていないのは、存在していないことと同じ』です。逆に言えば、きちんと伝われば、それだけチャンスがあるということで、結果的に、ビジネスが伸びるだけではなく、社会の役に立つことにもつながっていきます。だから、みなさんも、自らをもっと伝えていただけたほうが、世界がもっと良くなると僕は思います。

日本という国そのものが、とてもハイコンテクストな存在であり、“謙譲の美徳”といった価値観も強くある。それらも文化の一つではありながら、グローバルで考えれば常識は全く異なります。カルチャーも言語も違う人々に伝える、という意志を持って、コミュニケーションのスイッチを切り替えなくては『もったいない』と感じますね」(佐藤氏)

「コアにあるのは製品品質です。我々が担うのは自動車が走る・曲がるといった機能に直接影響する部品ですから、性能が高く、不具合がなく、必要な量を安定して供給できるという製品品質は至上命題。さらに、今後のNOKが高めていくべきは知覚品質ではないかと。総じて日本企業は愚直に製品品質だけを磨いてきた傾向にあるが、グローバルと戦うにはそれでは勝てない。

ビジュアルを交えて伝えていく、そういったマインドセットを持ってコミュニケーションすることには伸びしろがある。頭の中だけにある自社の優位性を、言葉にして伝える。日本国内なら通じる“阿吽の呼吸”が、グローバルではむしろロスになる。日本のBtoB企業こそ対峙する伸びしろとして、絶対に取り組むべきだと考えています」(鶴氏)

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この記事は2024年4月19日時点のものです。

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