ストレッチャブルFPC(後編)
「社会ニーズ」を見据えストレッチャブルFPCの用途開発、エンジニアたちの“粘り”の活動で結実

「いっそのこと“使い捨て式”はどうだろう」
逆転の発想で用途を切り開いた

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大阪大学関谷教授とのパッチ式脳波センサー・脳波シート共同開発に関する説明図。画像の左側には、パッチ式脳波センサーの回路基板と電極シートの写真が示されており、右側には伸縮性のあるシートを引っ張る手が描かれた画像があります。説明文には、超高齢化社会の問題として、2050年には日本人口の40%が65歳以上になること、要介護原因の半数以上が脳疾患関連であること、アルツハイマー性認知症による社会的コストが14.5兆円/年であることが記載されています。また、脳波センサー研究開発課題として、「装着感の低減」「医療機器精度」「手軽な取り扱い性」「普及価格」の4点が挙げられています。出典は科学研究費助成事業で、研究成果報告書が2018年6月4日に発表されたことが示されています。説明文の最後には、ストレッチャブルFPCのシーズ提案を行い、パッチ式脳波センサーの生体インターフェースの電極シートとして共同開発を開始したことが記載されています。
図1 ストレッチャブルFPCを利用した電極シートの開発へ

社内のロビー活動で製品化に向け仲間作りに腐心

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脳波シートとパッチ式脳波センサーの接続に関する説明図。左側には、脳波シート、脳波センサー、コネクター接続の写真が示されており、伸びるFPCをそのままコネクターに接続するのは取り扱い性において難があると記載されています。右側には、伸びないフィルムベースのケーブル(PETベース)を持つ手と生体電極部が描かれた写真があり、ケーブルにはコシを付与しており、生体電極部は超柔軟であることが示されています。下部には「ストレッチャブルFPCにあえて伸びないフィルムベースのケーブルを一体組み込み、パッチ式脳波センサーとの接続性を担保」と記載されています。出典は科学研究費助成事業 研究成果報告書 2018年6月4日、およびPGVです。
図2 ストレッチャブルFPCにあえて伸びないフィルムベースのケーブルを組み込む

いよいよ量産化へ、次なる課題はユーザビリティ

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ストレッチャブルFPCのシーズ提案から脳波シート開発、量産までの経緯を示すタイムライン。図は時期、仕向先、イメージの3つの列に分かれています。時期については、2014年12月末~2015年、2016年、~2018年(試作)、2019年(量産)、2022年(量産)の5つの期間が示されています。仕向先としては、2014年12月末~2015年、2016年、~2018年(試作)までは大阪大学関谷研究室、2019年(量産)以降はPGVと記載されています。イメージの列には、左から順に「単なる印刷シート」から「ケーブル一体化」、早期に基本仕様は確定、その後は小変更でブラッシュアップ、の各段階の写真が示されています。最後に、「2019年より、PGVに向けて脳波シートを量産・供給(これまでに延べ3万枚以上の納入実績)」との成果が記載されています。
図3 大阪大学発のベンチャー設立によって電極シートの量産化へ

用途拡大への積み重ねが奏功、「美顔器用に使えないか」

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ストレッチャブルFPCとハイドロゲルを組み合わせた電極シートの特長と応用について説明する画像。上部には「類似品との差別化、高付加価値」として、左側に手で引っ張って伸びる電極シートの写真があり、右側には「当社独自のストレッチャブルFPCの設計・製造技術により、超柔軟な『伸びる電極』を実現可能」「電極シートを生体に違和感なく直接貼り付けることが可能」と記載されています。中央には「複雑曲面を有する顔へのフィット、美容液で湿潤した肌への貼り付け」として、生体導通部材としてハイドロゲルを採用していることが説明されており、左側の写真は再び手で引っ張った電極シート、右側にはハイドロゲルの構造図が示されています。構造図には「1stセパ」「ゲル」「2ndセパ」「支持体(不織布)」があり、ゲルの厚み0.75mmが記載されています。説明文には「不織布にゲルを製膜した部材」「ゲルに電解液を保水させることで導電性を付与」「材料に厚みがあるため、複雑曲面の顔へのフィット、湿潤肌への貼り付けが可能」と記載されています。下部には「独自性のあるストレッチャブルFPCとハイドロゲルを組み合わせることで、顔へのフィット、湿潤肌への貼り付けを実現」と記載されています。
図4 EMS美顔器用電極シートのニーズに対するソリューション

立ちはだかった「ハロゲン」という難敵

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