ストレッチャブルFPC(前編)見た目はまるで湿布薬、美顔器電極シートに採用された伸縮性「基板」はこうして生まれた

「PEならFPCの製造工程をこんなに効率化できるじゃないか」

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フレキシブルプリント基板(FPC)の製造工程を示す図。工程は前工程、中間工程、後工程に分かれています。前工程では、パターン形成が行われ、PE方式とフォトリソ・エッチング方式の2つの方法が紹介されています。PE方式は導電ペースト印刷を行い、全3ステップで完了します。フォトリソ・エッチング方式は銅張積層板を準備し、表面洗浄、ドライフィルムラミネート、露光、現像、エッチング、ドライフィルム剥離などの全11ステップで完了します。中間工程では、カバー形成として加熱乾燥・硬化が行われます。図中には「パターン形成に関しては印刷方式の方がフォトリソ・エッチング方式に比べて絶対的に簡便」とのコメントがあります。後工程では、積層貼合めっき外形加工が行われます。図の下部には「2005年頃より、世界的にPrinted Electronicsのトレンドが盛り上がった FPCメーカーであるメクテックも注目」と記載されています。
図1 PEはフォトリソ・エッチングに比べて、前工程のプロセスを簡便化できる

タッチパネルの需要増に対応する透明FPCにPEを適用

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タッチパネルのX軸およびY軸のセンサーパターン形成とOCA貼合工程を示す図。左側の「X軸パネル」では、X軸方向のタッチ座標を検出するセンサーパターン(菱形の連続パターン)が形成されています。中央の「Y軸パネル」では、Y軸方向のタッチ座標を検出するセンサーパターンが形成されています。右側の「OCA貼合」では、X軸パネルとY軸パネルが高透明フィルムで貼り合わされ、透明導電パターンが示されています。図の下には「X・Y軸のセンサーパターンを別個のパネルとして製作し、後工程で貼り合わせる構造」と記載されています。
図2 X軸とY軸の透明な電極で構成される透明FPC

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PEDOT/PSS分散液を用いたコーティングフィルムの特徴と製造プロセスを比較する図。左上には、青い分散液が入った3つのフラスコの画像と、分散液を使ったコーティングフィルムの写真があります。中央にはTSP試作事例の画像があり、透明で薄いフィルムを持つ手が描かれています。中央部分はプロセス例を示しており、従来技術と新開発プロセスが比較されています。従来技術(既存技術)はアルカリプロセスで、以下のステップを含みます:Egレジスト形成、透明配線形成、Egレジスト剥離、引出配線形成、外形打抜・貼合と、それぞれの工程にDFラミ、フォトリソ(露光・現像)、とEg(酸系ウェットプロセス)、アルカリ液剥離、金属薄膜着・フォトリソ・Eg・剥離が関与します。新開発プロセス(本開発プロセス)では、全ての工程にスクリーン印刷が用いられます。下部には「アルカリプロセスによる特性劣化を抑えるため、ドライなスクリーン印刷をキープロセスに」と記載されており、コーティングフィルムのアルカリ耐性不足による特性劣化(抵抗上昇)を防ぐ方法が示されています。
図3 薬液プロセスの影響を避けるスクリーン印刷

印刷用銀ペーストとエラストマーシートの出合いで生まれたストレッチャブル

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2009年開発のコンセプトと現在のストレッチャブルFPCの比較図。左側の「2009年開発のコンセプト」セクションには、Cuパターン(ミアンダ状)+ウレタンの画像があり、用途ターゲットとしてロボット関節等配線が挙げられています。特徴として、伸縮は一方向のみ、伸長率は110%以下、繰り返し耐久は数万回、ウレタンの欠点(低耐熱、エッチング液染色、黄変)が示されています。しっくりいかなかった点として、想定していた伸長率150%以上、想定していた繰り返し耐久数十万回以上が達成できなかったことが記載されています。右側の「現在のストレッチャブルFPC」セクションには、特殊エラストマー(伸縮シート)と低弾性銀ペーストによる印刷配線を用いたFPCを両手で伸ばしている画像が示されています。全方向への伸びを実現するため、低弾性銀ペーストによる印刷配線が利用されており、PE(プリンテッドエレクトロニクス)だからこそ得られた機能と記載されています。
図4 銅パターンからPEによるストレッチャブルFPCへ

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銀ペーストメーカー共同開発による開発初期材と改良材の比較図。左側の「開発初期材」セクションには、フレーク状の銀粉末の断面画像があり、「開発初期の処方コンセプト」では、伸長性を良くするためにフレーク粉を適用しており、フレーク粉粒径は数μmで、フレーク粉同士で面接触を維持することや、フレーク粉適用の弊害として、印刷を繰り返すことで印刷版(メッシュ開口)にフレーク粉が目詰まりし、量産性への悪影響があることが示されています。右側の「改良材」セクションには、球状の銀粒子を用いた改良された材料の断面画像が示されており、粒径は33.3μmです。図の下部には「球状の銀粒子の適用によって、連続印刷性を担保(4時間以上の量産適正)」との説明が記載されています。
図5 ストレッチャブルFPCに必要な銀粉材料を独自に開発

新製品の開発は社会ニーズのキャッチアップから

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メクテックの開発の流れとストレッチャブルFPC商品企画の比較図。左側には「これまでのメクテックの開発の流れ」として、ニーズから開発・提案までの流れが示されています。サプライヤー、部品・加工メーカー(メクテック)、セット・デバイスメーカー(顧客)、消費者、社会が階段状に並び、それぞれが上流から下流へとニーズや提案を送り合う構造が描かれています。右側の「ストレッチャブルFPC商品企画」セクションでは、社会のニーズを上流から重要視し、インフラ、環境、医療、福祉などの新市場形成へのモチベーションが高いことが強調されています。また、社会からの問題・課題が消費者、セット・デバイスメーカー、部品・加工メーカー(メクテック)、サプライヤーと逆流する流れも示されています。図の下部には「材料メーカー・メクテック・顧客のクローズな開発体制から、社会・環境・情勢に基づくニーズ収集を行った」と記載されています。
図6 顧客のニーズ主体から、社会ニーズをキャッチアップした商品開発へ

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