ストレッチャブルFPC(前編)見た目はまるで湿布薬、美顔器電極シートに採用された伸縮性「基板」はこうして生まれた
電子機器の主要な構成部品の一つである電子回路基板。基板と聞くと、多くの場合は文字通り硬い板の上にたくさんのICチップが配置されたものをイメージするかもしれない。ただ、カメラやスマートフォン、タブレットといった小型・薄型の機器などを中心に、柔軟性があり、繰り返し変形させることも可能なフレキシブルプリント基板(FPC)が使われている。NOKグループには、FPCを進化させ、新たな用途を開拓したプレーヤーがいる。メクテックだ。メクテックが開発したのは、極薄で、伸縮性を持たせた「ストレッチャブルFPC」である。まるで湿布薬シートのように薄く柔らかい。その柔軟性・伸縮性を生かし、身体に貼り付けて脳波などを測定する医療機器に採用されている。最近では美容機器の一部として、やはり身体に貼る電極シートとして活用されるようになった。これほどの柔軟性・伸縮性を実現した基礎技術が、電子回路を基板に「印刷」するプリンテッドエレクトロニクス(PE)技術である。PE、ストレッチャブルFPCがこうして日の目を見るまでの道のりは、決して平坦ではなかった。PEを生かした製品開発プロジェクトは二度にわたって開発中止に追い込まれた。それでも、そこからの気づきを生かし、目指す製品形態を少しずつ変えて研究開発を続けてきた。その粘り強い「継続」の力と、「社会のニーズを捉える」という発想の転換により、たどり着いたのが、今のストレッチャブルFPCである。もともとはFPCの製造コストを下げることを目指してPEに挑んだメクテックが、医療機器用や美顔器用の電極シートの製品化に至るまでのストーリーを紹介しよう。