伸びて、縮んで、元に戻る。
ユニークな素材「ゴム」に挑むNOKグループのR&D
― 価値創造の源泉を探る ゴム素材編 パート1 ―

日本初のオイルシールメーカーとして出発したNOK。その主原料であるゴムの研究にも、半世紀以上にわたって取り組んできました。
自動車用オイルシールに使用するゴムには、油に強いことやエンジン周辺の高温に耐えること、さらに寒冷地でも弾力が保たれることなど、さまざまな条件が求められます。これらを実現しながら、時代の要請に合わせて進化を続けてきたNOKのゴムの研究をご紹介します。
ゴムは固体か、液体か? 分子レベルで見てみると
輪ゴムやゴム手袋、ゴムホース。ゴムは暮らしのそこかしこで活用される身近な素材です。しかしあらためて注目してみると、ゴムという物質には、ほかの物質にはない非常にユニークな性質があることに気付かされます。
例えば、紙は引っ張ると破れてしまう。木材は、強い力をかけるとへこんだり割れたりする。このようにほとんどの物質は、力をかけると変形し、元に戻ることがありません。一方ゴムは、外からの力に応じて伸縮し、力を除くと元の形に戻ります。この性質は弾性と呼ばれるものです。
柔軟に形を変えるゴムは、物質の三態、すなわち「固体・液体・気体」のいずれかに当てはめるとしたら、固体よりもむしろ液体に近いと言われています。実際に液体とゴムを分子構造から比較してみましょう。
液体の内部では無数の分子が動き回っているため、一定の形状に留まることがなく、器に合わせて自在にその形を変えます。ゴムもまた動き回る無数の分子でできていますが、液体と異なるのは、たくさんの原子が連なった鎖状の分子が複雑に絡み合っていることです。さらに、それらは硫黄などによって互いに強く結びついています。
そのため、ゴムを引っ張ったとしても分子同士がつなぎ止め合い、元の形に回復できるというわけです。
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ゴムの分子構造をさまざまな手法で分析
一口にゴムと言ってもその性質はさまざまで、製品の形状やゴムに混ぜられた物質、分子構造などの要素によって異なります。そのためゴム製品の開発には、目に見えるミリメートルサイズから目に見えない分子・原子レベルであるナノメートル(10億分の1メートル)サイズまでの幅広いスケールで構造を理解する必要があります。
NOKでは、オングストローム単位の電子の偏りや、ナノメートル単位の微細な構造から、マイクロメートル(100万分の1メートル)単位の油膜、ミリメートル単位の製品における応力まで、幅広く物体・現象の研究を続けています。
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分子レベルでの構造を知るためには、分析手法が重要となります。NOK湘南R&Dセンター(神奈川県藤沢市)では40以上の分析装置が稼働しており、その一部を挙げると、医療用の核磁気共鳴を使った分子構造分析や、原子間力顕微鏡による表面ナノ構造分析、X線光電子分光分析による表面組成分析などがあります。
さらに、他企業や大学、研究機関、そして1960年より資本提携をしているドイツのフロイデンベルグ社とも技術交流や人材交流をしながら、常により良い分析や測定の方法を研究開発しています。
このような高度な化学研究が、NOKのモノづくりや製品の信頼性の基盤となっているのです。
画像はいずれもJournagram「そもそもゴムとは?~ゴムの構造と自己修復するゴム~」より