私たちの暮らしの進化を支える
FPCの製造現場
電子機器を構成する重要な部品の一つである電子回路基板は、電子機器の小型化や薄型化と共に進化してきました。その中で、薄くて軽く柔軟性があるフレキシブルプリント基板(FPC)の市場が、通信業界の需要増や、コネクテッドデバイスの成長、カーエレクトロニクスなどの進歩を受け、拡大し続けています。NOKグループで電子部品事業を担っているメクテック株式会社は、海外市場にも積極的に展開し、世界中のメーカーと取引をしています。
多様なデザイン、複雑な形状の電子機器に欠かせないFPC
私たちが普段使っているスマートフォンやパソコン、デジタルカメラなどの内部では、さまざまな電子部品が回路基板の上でつながれています。従来、回路基板は樹脂やガラスなどといった素材で作られていました。FPCはそれらの代わりに、柔軟で機械的強度に優れた絶縁体のポリイミド樹脂を用いた、繰り返し変形させることを可能にした回路基板です。薄く、軽く、屈曲性に優れたFPCの特性によって、電子機器のデザインの多様化や形状の複雑化にも対応するので、設計時の自由度が高められます。
FPCは、デジタル社会の目覚ましい進化に必要不可欠な存在となっているのです。
近年は電動車(xEV)にも多く採用されています。中でも車載バッテリー向け電圧監視用FPC(以下、車載バッテリー向けFPC)はこれまでになかった大型製品です。従来、車載バッテリーの各セル(電池)は、ワイヤーハーネス(電線)で過放電や過充電などを防止する電圧監視システムに接続されていました。それをFPCに置き換えることで、コンパクト化や軽量化を実現させています。特にEVは航続距離を伸ばすために、バッテリーの容量増加や高機能/小型化が進んでいるため、FPCの役割は自動車の性能にも影響を与える重要な部品なのです。
メクテックのEV関連製品
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バッテリー用FPC
リチウムイオン電池の電圧監視用など -
画像センサー用FPC
センサーを活用した運転支援システム -
カメラヒーター用FPC
カメラやミラーの曇りを防ぎ安全性に貢献
電圧監視用FPC(イメージ)
バッテリーを安全かつ最適な性能で使用するためのモニタリングを行う
材料からのモノづくりで他社と差別化
FPCは、基本的にポリイミドフィルムと銅箔、接着剤の3つで構成されます。ポリイミドフィルムに接着剤で銅箔を貼り合わせたものをベース材とし、その上に電気回路を形成してカバー材と貼り合わせます。このベース材とカバー材が、FPC の機能を決定づけるものとなります。要求性能に合わせて、ポリイミドの厚みや柔らかさ、銅箔の屈曲性、接着剤の柔軟性や耐久性などを吟味して組み合わせるからです。
メクテックでは、ベース材とカバー材を貼り合わせる際の鍵となる接着剤も、社内で開発・製造しています。それがFPCの柔軟性と、何億回屈曲させても剝がれない接着力を両立させているのです。数あるFPCメーカーの中で、ベース材とカバー材を自社で開発・製造しているのはメクテックだけです。創業以来の「材料づくりもモノづくり」という思い、そして材料技術はメクテックの大きな財産となっており、材料の自製が他社とのはげしい価格競争に勝てる大きな要因とも言えるでしょう。
部門間のチームワークで品質管理の課題を解決
2023年、メクテック牛久事業場構内に所在する株式会社MEK-Jに、大手自動車メーカーの車載用バッテリー向けFPCを製造するラインを新設しました。車載用バッテリー向けFPCのサイズは1メートル近くと、スマートフォンやカメラなどの電子部品向けの製品と比べ圧倒的に大きいサイズです。製品1つ当たりの単価が高く、製造工程でいかに不良品を出さないかが、小型製品と違うレベルで重視されます。また、メーカーからの品質・管理要求が非常に高く、異物の混入や打痕、変形などは一切許されません。
そこで、これまでは人が行っていた作業のほとんどを機械に置き換えることで、ヒューマンエラーの防止を目指しました。さらに、個々の製品にQRコードを付けることで、トレーサビリティを徹底。万が一不適合品が発生しても、どこから流出したロットなのかが即座に判別でき、後工程へ回すことなく製造ラインから外すことができます。こうした取り組みにより、品質の安定化と向上を実現しました。
これら生産ラインの改善は、さまざまな部門が連携することで実現したものです。従来、製造部門では、技術部門が設計した設備をそのまま使っていたのですが、それでは、現場での改善点を実際に製造ラインに反映させるまでにタイムラグが生じます。そこで、車載用バッテリー向けFPCラインの立ち上げでは、設計部門から技術部門、製造部門、品質部門が全て連携。お互いが絶対譲れない部分もありましたが、粘り強く協議を重ね、解決方法を探り出しました。
メクテック牛久事業場内では、開発・設計・品質管理部門と生産部門であるMEK-Jが近接しています。プロジェクトを経て、スムーズに情報共有が行える体制がさらに進化しました。各所がチームワークを発揮することで、生産現場からのフィードバックが即座に設計に反映でき、設計改善や品質向上、コスト削減が実現しやすく、設計段階での実現可能性や生産性をより一層考慮した製品開発を行えるようになります。
グローバルでの安定供給を実現
車載用バッテリー向けFPCは電子部品事業の主要な柱の一つに成長しました。大手完成車メーカーをはじめ、OEMやTier1(完成車メーカーに直接部品を供給するメーカー)も含めると、納入先は世界各地の約500社に及びます。欧州、北米、中国、日本、ASEANと地域ごとに戦略を策定して拡販を進めているのに加え、北米現地での試作品生産能力も強化しました。海外に多くの生産拠点があることもメクテックの強みです。高い品質の製品を、グローバルで大量かつ安定的に供給できます。
部門や地域を横断した全社員が知見を共有し、世界中に高品質な製品を届けることで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献していきます。